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仕事で訪れた石垣島の帰りに宮古島に寄った。石垣島での仕事に同行していた沖縄本島に住む比嘉さんも一緒。宮古島の海は沖縄でも抜群にきれいらしい。沖縄本島や石垣島に住んでいる人から何度も聞かされた言葉。
「宮古の海が一番きれいですよ」と。
だからいつかは行きたいと思っていたのだが、ANAの東京-石垣間の直行便がなくなり、なんと宮古経由になった。せっかく宮古空港に降りるんだったら、そのまま空港も出ちゃって宮古を楽しんじゃおうみたいな。(笑)
石垣島同様に前日まで晴れていたハズの宮古島は、なんと雨…。そして空港で待ってくれていたV6の誰かによく似たオキナワレンタカーのおにいさんがこう言った。
「送迎用の車が来るまで外に出ないで下さいねー」
「え!?折りたたみの傘を持ってますから大丈夫ですよ…」
「いえ…、外は嵐ですので…」
よく見ると、外を歩く人の姿は悲惨なものであった…。
うわぁっ…。バカンス気分は一気に崩壊した。
南の島の観光は、バクチのようなもの。晴れか雨かで恐ろしく変わってしまうからだ。
「最悪ですねー。ガハハ」
比嘉さんと二人で声を上げて笑った。もう笑うしかない。
「ガハハ…」
ナビが付き、6時間程で3,300円と安い小さなファンカーゴを借りて向かったのは、繁華街の平良(ひらら)市内にある老舗のそば屋「古謝食堂本店」。本島に住んでいる比嘉さんは、何度か宮古に仕事で来ておりここがおすすめらしい。東京の下町の路地裏のような一通の多い一帯をクネクネ入った所にあった。
すでに昼の1時前。広い店内の畳の小上がりでゆったり頂くことにした。そして、初めて見る「ゆし豆腐そば(600円)」を頼んだ。現れたそれは、麺が見えないほどたっぷりとふわふわのゆし豆腐(おぼろ豆腐)が笑っちゃうくらい全面的に覆われていた。そしてこれが実にまろやかで旨かった。平たい麺は宮古そばにしては少しやわらかく感じたが、ゆし豆腐とはこれくらいの感じが合うように思った。
「いやーだいず(宮古の言葉でとてもという意味)うまかった!」
比嘉さんが仕事の打ち合わせに行っている間、宮古の繁華街をドライブしてみるが、一通が多く、ナビが古いせいもあり軽く迷子になってしまいあたふた…。なんとか比嘉さんと合流でき向かったのは、池間大橋。
ホントは、人気の「砂山ビーチ」へ行きたかったのだが、この暴風雨の中では行ったところで本来のきれいなビーチは見られないだろうと判断しあきらめた。レンタカー屋さんに聞いたところでは、この日の風速は、なんと18メートル。17メートルを越えると台風と言われるようなので、この日は、台風である事実を突きつけられた…。ありゃりゃ…。
時々突風にあおられグラッと車が揺れるが、平良市内から20分程で全長1425メートルの池間大橋を渡りはじめた。天気は最悪だが、それでも海の色はうつくしい。うーん、晴れてたら最高なのに…。池間島へ渡りきった所が食堂や土産屋が並ぶパーキングエリアになっており観光のバスなどがとまっていた。せっかくなので橋の写真を撮ろうと降りたが、一瞬で傘はいらないことに気づかされた。
傘なんぞ一瞬で壊れる暴風雨…。仕方なくジャンバーのフードを両手で掴みながら撮影ポイントへフラフラしながら歩いていく。驚くことに年配の観光客の方が数名この暴風雨の中で記念撮影をしていた…。もちろん笑顔はない。まともに写真を撮れる状況ではなかったが、かろうじて撮り終え車に戻ると、また比嘉さんと一緒に「ガハハ」と笑った。
やっぱり笑うしかないのだ。
さすがにきれいな海の風景はあきらめ、逆に暴風雨の中で見るとさぞかし迫力があるだろうと思った宮古島の最東端「東平安名崎(ひがしへんなざき)」へ向かった。途中、顔や手が真っ白で赤い口紅を塗った警察官の人形に出会った。まあ、不気味な人形でドライバーに注意を促すためと思われるが、効果はどうなんだろう…。宮古を走る間に3回も出会った。
東平安名崎は池間大橋を出て45分程で着いた。道端に車をとめ先端まで見渡せる展望台まで吹き飛ばされそうになりながら歩いた。両手で掴んでいるフードが風にあおられバリバリ音をたてている…。強烈…。そして、目にした風景に驚きの声を上げた。うぉぉぉー!すっげーーー!与那国島を思い起こさせる断崖絶壁と緑。透き通るような海に大きな白い波がジャンジャン襲い掛かる。2キロ先の岬の先端付近には大きな岩がゴロゴロ転がっている。自然の厳しさと美しさを同時に見せられているようだった…。
ホントは灯台のある先端付近まで歩いて行けるのだが、この天候の中、そこへ向かう人はさすがに誰もいなかった。我々もさすがに観光をあきらめ平良市内へ向かった。途中見かけたガソリンスタンドのような建物は水の販売所のようだ。宮古島はほぼ平らな島で、島の地下がダムの仕組みになっており海にも水が流れないらしい。従って水は豊富。そしてそれが宮古の海がきれいな理由でもあると聞いた。なるほど。
予定より早めにレンタカーを返却した。こういう日は飲むのが一番!
「飲みましょう!」と、宮古空港の中にある水族館のような変わった居酒屋で比嘉さんとオリオンビールの中ジョッキで乾杯!いやーうまいっ!つまみは適当に中ジョッキを二杯楽しんだ。石垣島へ引き返す比嘉さんを見送った後、まだ時間があったのでタクシーで金吾という島料理屋へ向かった。
わずか10分程で着いたその店は、イカスミ料理が旨いと聞いていた。この日三杯目のオリオンビールと一緒にまずは、イカスミチャンプルー(682円)を頂いてみる。濃厚…。イカスミの甘味がなんともいい感じで旨い。一緒に炒められた玉ねぎともよく合っている。プリプリ感もたまらない。
しかし、天候が悪いせいか広い店内で客は僕ひとりとなんだか寂しい…。窓の外は相変わらずの暴風雨。宮古の締めに、宮古そば(525円)をズルズルすすった。沖縄本島のコザ(沖縄市)にある宮古そばの店「愛」を思い出させるような固めの麺で旨かった。さっぱりと豚骨とカツオの風味を感じるスープもいなかなか。いい時間になり、タクシーを呼んで空港まで帰ろうと、店まで連れて来てもらったタクシー会社の名刺に書かれている番号に電話をかけた。
「あのー、金吾という店にいるのですが、タクシーを1台お願いしたいのですが…」っと、僕。
「……。何を言ってるのか分からないんですけどね…」
そんなようなことを現地の言葉で言っている。
え!?もしかして通じない…。いやいや、レンタカーだってちゃんと借りられたし、居酒屋でも普通にやりとりができたぞ…、何よりここは日本だ。っと思い、もう一度言ってみる。
「いま、きんごというみせにいるんですけどね、タクシーを1台おねがいしたいのですがー!」と、かなりゆっくり言ってみた。
「……。やっぱり何を言ってるのか分からないんですけどね…」
そんなようなことを現地の言葉でまた言われた…。
ダメだこりゃ…。
仕方なく、店の人に替わってもらった。5分もしないうちにタクシーは到着した。なんだかものすごい衝撃だった…。
スピーチを交えて酒をひたすら回し飲みする地獄のオトーリ(一度経験あり)や、今はもう少なくなったと聞いたが宮古の犬を食べる習慣と同じくらいの衝撃。茶色い犬の肉がうまいとかなんとか…。宮古はだいずすごい島なのだ。
「宮古のホントの良さは泊まらないと分からないですよ」
と言ってた比嘉さんの言葉が後からジワジワ響いてきた。今度また天気のいい日に泊りがけでゆっくり楽しみたい。
東京へ帰る飛行機の窓からは神戸、大阪、京都周辺のライトアップされた美しい街並が見えた。
一足早い粋なクリスマスプレゼントだった。ありがとう。
(06年12月:旅々旅人) |
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