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朝の6時。函館の朝市は、前日夕方に来た時の静けさが嘘のようにガヤガヤ賑わっている。店頭には毛ガニ、タラバガニ、ホッケ、紅鮭などがギシギシ並ぶ。それらピチピチの海産物と一緒になぜかメロンを置いている店が多い…。なんでだ?函館ではカニ漁も行われていないし、メロンだって作ってないはず…。
「おにいさんどっから来たの?」
と声をかけるのが函館の市場の方のお決まりのアプローチ。何度そう言われたことか…。(笑)
妻と息子はまだホテルで寝ているが、函館に来たからには、一人でもやはり朝市で朝ごはんを食べたい!キャッチセールを避けながらぶらぶら歩き、海に近い道南食堂という小さな食堂に入った。そしてイカの刺し身と大きなホッケ、ホカホカのごはんに味噌汁という、市場の朝ごはんをたらふく食べた。芸能人好きの店らしく店を訪れた素顔の芸能人達の写真がこれでもかと言うくらいベタベタ貼られていた。
朝市を後にし、すぐ近くの函館駅まで9時30分に登別方面へ向かう北斗5号の切符を買いに行ったのだが、やはり北国の港町。8月だというのに、ビュービューと海からのちょっと冷たい秋のような風が吹き抜けていく。窓口で目的を告げると、指定席はなんと残り2席。しかも隣合わせの席ではない…。う〜ん。仕方なく自由席の切符を買った。そんなに人気の路線なの…?少々疑問を感じつつ家族が待つホテルへ寂しく戻った。
指定席で行く予定が急遽自由席となったため、早めに行って席を確保しなければならず、かなり早めに函館駅へ行くと、
「一つ前の8時30分発のスーパー北斗3号に間に合いますよ」
と、サラリと駅員さんに言われた。それは素晴らしい!
修学旅行生が体育座りで静かに先生の話を聞いている前をドタバタ走りながらり慌てて乗り込んだ。プシュー!乗り込んですぐにドアが閉まり電車はガタゴト動き出した。間に合うと言っても…こんなにギリギリとは思わなかったですよ、駅員さん…。しかし後々この1時間が大きくプラスになるのであった。そして、指定席が取れなかった理由が修学旅行の皆様であることに気づいた…。
指定席の車両から自由席の車両まで5両程ゴロゴロとスーツケースを転がしながら、やっとの思いで自由席車両の席に座れた。ふぅー。良かった良かったと言いながら、程よく乗客が乗っている車内を見回すと、家族連れ、男一人、女一人、韓国人(多分)のカップルと様々。電車好きの2歳の息子は「でんしゃ!でんしゃ!」「じぇいあーる!」とはしゃぐため、突然迷惑な家族の乱入となったのでした。すみません。
天気は曇り。函館を出て美しい大沼公園を過ぎた電車の窓からは、勇ましい駒ヶ岳(こまがだけ:1131m)の姿が見える。なんだかディズニーシーのようだ。いかめしで有名な森駅を過ぎると、右手に北の海といった感じの寒々しい内浦湾が広がる海沿いをどんどこどんどこ駆け抜ける。そして函館駅を出て約2時間10分後に、登別駅に着いた。
ホームに降り立つと雨は振っていないが、ちょっと肌寒い空気を感じた。改札を抜けた所に、大きな熊の剥製があり、息子はびっくり。ケン太と言うらしい…。駅の構内にある駅レンタカーで借りた車のナビを洞爺湖が見渡せる「サイロ展望台」にセットした。慣れない車のナビの設定に時間がかかってしまいスタートダッシュに失敗…。よくあることである。
ほっそりと美しいブナの木々に囲まれた山道をグングン駆け抜けていく。う〜ん。それにしても快適なドライブ。信号もほとんどなく車も滅多に通らないため最高に気持ちがいい。15分も走ると電車ではしゃぎ過ぎた息子の寝息が聞こえてきた。そして1時間も経たないうちに、深い青色に染まる洞爺湖が見えてきた。洞爺湖沿いを高台にある展望台へ向け走る。窓の向こうにレストラン、ホテル、ペンションなどが続いた。
洞爺湖のある洞爺湖村は、調べてみるとかなり歴史の浅い村で明治20年に香川県の旧丸亀藩士「三橋政之」が実弟「間宮光貴」と共に、22戸。76人を率いて集団移住したのに始まると「郷土資料事典」に書かれていた。なんと四国の香川県出身の方々が開拓した村なのであった。
国道230号線沿いにあるサイロ展望台には大きなみやげ屋とレストランが合体した建物があり、想像以上の観光ポイントであった。その建物内に入り驚いた。店の奥の大きな窓ガラスに、ドドーンと洞爺湖が迫るように映っているのだ。
足早にみやげ屋を突き抜けた。広い芝生の展望スペースに出ると、壮大で優美な洞爺湖の姿が広がっていた。うわぁぁ…。湖の中央に浮かぶ大きな中島。その横に観音島と弁天島と饅頭島が並ぶ珍しい風景である。湖の反対側には昭和新山と有珠山の姿も見える。これは絶景…。あいにくの曇り空で羊蹄山(ようていざん:1898m)の姿が見られなかったのは残念であった。
しかし…、なんだか外国に来たかのような錯覚を覚えた。ゆっくりと周りの人を見ると、どうも日本人でない方が圧倒的に多い。ハングル語らしい言葉がふわふわと宙をまっている。
グルグルとお腹も空いてきたし、2歳の子供もいるのであまり昼ごはんの時間を遅らせられないので、仕方なく(すみません)サイロ展望台のレストランに入った。社員食堂のように無機質で大きな食堂。客はなんと我が家族だけ…。やっちまった…。いろんなことを覚悟した。しかし景色は最高。デカデカと見える洞爺湖を見ながら、塩ラーメンを食べたが、予想を裏切り、あっさりとなかなか美味しく嬉しかった。妻が食べた豚丼は、どうだったか…。(笑)
サイロ展望台を後にし、来た道を5分程戻り訪れたのは、牧場の絞りたてアイスが食べられるレークヒルファーム。既に何台もの車がとまっており人気の場所ということが伺える。カラフルな花畑の先にリゾート地のペンションのような素朴なお店が建っていた。店内に入ると、メニューが20種類ほどもあり、おもいっきり迷ってしまったが、どうやら牛乳と生クリームを混ぜた「ダブルクリーム」というのが人気らしく、それとゴマアイスを注文した。それら二つがなんとも美味しそうにコーンに盛られ出たきた。
一つを家族みんなで食べ始めたのだが、笑っちゃうくらい美味しかった。わが人生で最も美味しいアイスクリームではないだろうか。妻も同じくそう言ってたっけ…。アイスを食べた後、お店の裏に広がる緑の芝生に出てみた。ピンクと白のコスモスも咲いている。
初めて見る緑いっぱいの風景に息子は興奮を抑えきれずキャッキャキャッキャと走り始めた。こんなに笑顔で走り回る息子を見たのは初めてかもしれない…。遠くうっすらと見えるのは、羊蹄山。蝦夷富士とも呼ばれている円すい型の成層火山だ。道を挟んだところには牧場も広がり、牛達が静かに草を食べていた。レークヒル牧場には約100頭の乳牛が暮らしていると聞いた。
息子はすっかりレークヒルファームが気にいったようだ。アイスと大自然は人の心をハッピーにさせるらしい。しばらく遊んだ後、車に乗り込み来た道を戻り始めると、フロントガラスにポツポツと雨が落ちてきた。次第に激しさを増した雨により、ドライブは手段に変わった…。函館を1時間早く出たおかげで、レークヒルファームで遊べたわけであり、改めて函館の駅員さんに感謝したのであった。
(06年8月:旅々旅人) |
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