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朝の7時半。黒川温泉で散歩と朝風呂を楽しんだ後、湯布院へ向かった。宿の朝食が8時からと、ちょっと遅かったのでそれをキャンセルし、湯布院の金鱗湖(きんりんこ)のほとりにあるカフェでとることにした。
まだ車もほとんどすれ違わない静かな「やまなみハイウェイ」をレンタカーのLifeでぐんぐん登っていく。途中窓から見えた壮大な風景に思わず声を上げる。やわらかい狐色に染まる大草原がズバーンと広がっている。とても日本とは思えない風景。1330mの牧の峠を過ぎると下り坂が続く。そして長者原からまっすぐにグィーンと伸びる一本道を駆け抜けた。かつてないほどの最高のドライブコース。すばらしい…。
つづら折りの山道をクネクネ走り、黒川温泉から1時間10分程で湯布院に着き金鱗湖そばの広い駐車場に車をとめた。3月前半だが外に出るとやはりちょっと寒い。湯布院の観光名所である金鱗湖には朝の8時台だというのに多くの観光客の姿。その中に紛れる形で湖畔を歩く。想像していたよりもうんと小さな湖。そしてモクモクと湯気が立ち昇っているのが分かる。どうやら温泉が湧き出ているようだ。郷土資料事典によると、かつては湯布院盆地全体が大きな湖で、現在の金鱗湖はその残存湖と言われているそうな。
そしてどうしたことか、向こう岸から四羽の大きなガチョウがグワァグワァと目の前までやって来た。餌をもらう習性があるのだろうか…。9時になり湖に面して建つ「カフェ ラ・リューシュ」がオープンした。湖が見えるテラス席に座り緑のパラソルの下でモーニングスコーンセット(750円)を頂いた。セットについているアメリカンコーヒーを飲んでいると、何やら左手下の方から湯が流れる音と一緒に人の声が聞こえてくる…。なんだなんだ?どうやら共同の温泉浴場(混浴・下ん湯:200円)があるらしく、朝風呂を楽しむ人の声であった。
少し歩きたくなり湯の坪街道と呼ばれる由布院駅まで伸びる道をブラブラ歩いた。はちみつショップ、パン屋、魚屋、醤油店、カフェ、カレー屋、みやげ屋などが軒を連ねる。白滝川のそばにあるのが行列ができることで有名なロールケーキのお店「B-speak」。10時の開店前だがすでに行列ができていた。
由布院駅までは意外と遠く、20分程もかかった。そしてパカパカと歩く白馬の馬車や人力車とすれ違いながら、来た道をそのまま戻るのであった。道の先に堂々たる姿で鎮座する由布岳(1583m)を見ながら…。
さてと温泉につかろう。湯布院は泊まるにはかなりお高いので日帰りで温泉を楽しむのがいい。向かったのは、由布岳を見ながら入れる「山のホテル 夢想園」。金鱗湖からわずか7分程。受付で700円を支払い、露天風呂の「御夢想の湯」へ坂道を少し下る。脱衣所から覗いた露天風呂にゾッとした。ものすごい人…。小さな脱衣所にもたくさんの人と話し声。ハングル語も混じっていた。
無色透明の単純温泉の湯につかる。たしかに由布岳も見える。しかし……、やはり人が多すぎる。子供も多く、なんだかプールにつかっている感じがし、落ち着かなく早々と露天風呂を後にした。土日はいつもこうなのだろうか…。こんなに人の多い露天風呂は初めて。ここは平日で人が少ない時に入らないと本当の良さは分からないだろうなぁ…。閉店間際の銭湯よろしく混んでる風呂というのはどうも苦手…。
風呂上り、受付の横で売っていたラムネ(200円)を一気に飲み干した。懐かしく甘い味が口の中に広がった。ふぅー。さてと、気を取り直して次へ行くとしよう。目をつけていたのはコバルトブルーの湯で有名な「庄屋の館」。少し山を上がった静かな場所にある。由布院駅からだとわずか5分程。
高大な敷地に建つ温泉宿。古く伝統的な建物の本館で700円を支払い、大露天風呂へ歩いていく。タオルまで用意されていてありがたい。先客は2人しかいない。素晴らしい…。そして脱衣所の大きなガラス窓から見える湯は、ホントにコバルトブルーに美しく輝いていた。湯は、やや熱めで自分好み。そしてやわらかくとろみがあり素晴らしい。これは、いいわぁ…。
実は正直なところ、コバルトブルーの湯にそれほどの関心はなかった。湯の色が青いということがそんなに価値のあることなのだろうか…と。しかし、実際にその湯を見ると、なんとも美しく癒される。露天風呂の中にある岩も泉質の影響で白くなっており、その白とコバルトブルーのコントラストがまた良かった。源泉がドボドボ流れ落ちる真っ白な折出物付近はかなり熱かったが本物の温泉をしみじみと味わった。
「いい湯ですねー」
先にいたおとうさんに話しかけてみる。前日から湯布院の立ち寄り湯を回っているらしいが、
「ここは別格ですよ」
と、目を輝かせながら満足気に話してくれた。天気も良く最高の露天風呂だった。脱衣所で服を着ていると、常連らしい人たちが来て、湯を覗くやいなや、
「今日はちょっと青くないなー」
とつぶやいたのが聞こえた。日によって色が変わるらしい…。
お昼も近くなり、お腹も自然と空いた。何を食べるか…。事前にいくつか候補を挙げていたが、どうも温泉地では蕎麦が食べたくなる。なんだろう…これって…。特にこの日は蕎麦しか考えられなく、庄屋の館から3分程の場所にあるそば屋「不生庵」に寄った。木のぬくもりを活かしながらもどこかモダンな店内からは、湯布院の街並が見下ろせた。頼んだのは黒豚そば。
黒コショウをかけて食べるのがおすすめらしく、それを適当にかけて手打ちの麺をズルズルすする。ちょっと粉っぽく、口の中でやわらかくとける不思議な食感と、とらえどころのない味わい。まあ蕎麦が食べたく、それが食べられたのでそれで良かった。1470円しましたが…。(笑)
まだ庄屋の館の湯の感触が身体全体に気持ちよく残る中、湯布院を後にした。いい気分だ。予定より時間が余ったため、せっかくなので大分空港への帰り道にある別府に寄って帰ることにした。
(07年3月:旅々旅人) |
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