|
|
|
|
9月後半。羽田からの出発が30分程遅れ、昼の1時30分頃に高知龍馬空港に到着した。この時間帯の遅れはキツイ。12時を過ぎた頃からお腹はずっと鳴りっぱなし。たまらず空港内にあるうどん屋「空海」へ直行。2歳の子供も一緒の家族旅行。お昼はうどんあたりが何かといいのだ。
しかし、それでも何とか高知らしいメニューをと思い、四万十川の「のり」がのっかった「四万十うどん」を食った。「のり」の風味がなんとも良かった。売店でみやげに買って帰ったくらいだ。みやげと言っても我が家用だが…。(笑)
予約をしていたレンタカージャパレンの送迎車でわずか2分程のところにあるプレハブ小屋の小さな営業所へ案内された。車を降りると、9月も後半だというのに真夏のような陽気。あつぅ…。費用を抑えるために軽自動車を予約していたのだが、どうやら使用中らしく1ランク上でホンダのメタリックブルーのFITが用意されていた。ラッキー!チャイルドシートには白い使い捨てのシートまで敷かれていて嬉しい。おまけに3日間(昼借りて翌々昼戻し)で1万5千円を切る安さ。
ナビをセットして向かったのは、1年前一人で来た時に時間がなく行けなかった桂浜。黒潮ラインを10分程走ると助手席側の窓に青く染まる土佐湾が映った。桂浜まであと少しと迫る浦戸大橋をグルリと回転しながら渡るのだが、そこから見下ろせる港町の風景が映画のロケ地を思わせるほど絵になりいい感じ。橋を渡るとさらに高い位置から海が見えた。やっぱきれい。沖縄の海ともまた違う鮮やかな緑色。
空港近くの営業所を出て約20分。桂浜の駐車場に着いた。車を降り桂浜へ歩き出す。イカ焼きやアイスクリーム、みやげものを販売するお店を抜けると、大きな松の木林の向こうに桂浜が広がっていた。うわぁぁぁぁ!すごい!想像以上に大きくてうつくしい。
そして、桂浜といえば坂本龍馬。僕の中では秀吉、家康に並ぶ英雄。そして、ここまでまっすぐで魅力的な人物はいないと思う。彼の銅像もこれまた想像以上に大きく凛々しい姿で立っていた。司馬遼太郎の「竜馬がゆく」を読むと、お盆や中秋の明月の夜には、龍馬も度々この砂浜で郷士の仲間と終夜酒をのんだと書かれている。
坂本龍馬は、1835年に現在の高知市に生まれた幕末期の志士。1862年に脱藩し、江戸へ上って勝海舟に航海術を学び、1865年に長崎で航海運輸業(後の海援隊)を営みながら、中岡慎太郎と共に薩長同盟を結ばせるなど政治活動にも奔走。その後、大政奉還を実現させたことでも知られる。1867年に京都の旅館近江屋で中岡慎太郎と会談中に襲われ斬殺された。33歳であった。(郷土資料事典より)
そうこうしている間も波の音が気持ちよく耳に入ってくる。たまらず砂浜へ駆けおりた。波打ち際で海を覗くと水の色がきれいで嬉しくなった。2歳の息子も大喜び。どうやら海に入りたいらしく何度も「うみー!!」っと泣きそうな顔をして叫んでいた。海に向かって「うみー!」と叫ぶ人間を初めて見た。(笑)
砂浜を後にし、駐車場へ歩き始めて間もなく足がとまった…。なんと、目の前に大きな土佐犬の姿。そしてこちらへ向かって歩いてくるではないか……。おぉぉぉぉ!飼育係りの人と一緒ではあるが、でかくて、ものすごい筋肉と厳つい顔。そして既に戦闘モードであり、恐ろしい…。後で知ったが、その土佐犬と出くわした場所にある建物が土佐犬センターで実際に犬が闘う闘犬も見られるらしいのだ。
もはや、ワンワンなどという可愛らしい犬のイメージはどこにもない。ライオンやトラなどと同じ猛獣の世界。危険を感じ、カメラさえ向けられなかった…。しかし飼育係りの人が逆の立場で危険を察したらしく、一旦引き返してくれた…。すみません。それにしても恐ろしかった。こういう恐ろしさはかつて味わったことがない。
桂浜を出てのんびりとドライブがてら、一度は行ってみたかった「ごめん駅」へ向かった。南国市から奈半利(なはり)町を結ぶ全長42.7kmの「ごめん・なはり線」の始発駅。窓の両サイドに広がる田んぼのあぜ道には真っ赤なヒガンバナが美しく咲き乱れる。人口5万人ほどの小さな南国市の中心部に、思いのほか大きくきれいな姿の駅舎があった。駅に着いたその時に、アンパンマンのキャラクターが大きく描かれた列車が出発していくところであった。
「パンパンパン!」と、まだちゃんとアンパンマンと言えない息子が叫んだ。
160円の入場券を買い電車好きの息子と二人、ホームでしばらく楽しんだ。妻は、久しぶりに真夏のような暑さの中を歩いたせいでダウン。駅構内の日陰のベンチでしばらく休憩。ごめん…。ホントは電車にも乗り海岸線を走りたかったのだが、それは僕だけの願いであり…、息子も電車を見るのは好きだが乗るのはそれほど好きではないので、あきらめたのであった。今度は自分に、ごめん…。
夕方はやめに高知駅近くにある「ホテル高砂」に着いた。和室があるため家族にはありがたい。おまけに風呂とトイレも別。そして高知の街並みが見渡せる展望大浴場もある嬉しいホテルだ。さっそく子供を風呂に入れた後、ゆったりしながら窓の外を見るとなんと大雨…。しかし、空は明かるいためすぐに雨はあがるだろうと思っていたが、なかなかそうはいかない。傘を持たずズブ濡れの人たちが行きかう風景がしばらく続いた。
1時間半ほど経つと小ぶりになったのでホテル近くの「たたき亭」という郷土料理の店に入った。観光ブックでも御馴染みの有名店だ。畳の小上がりからオープンキッチンでカツオを藁焼きする光景が見える。まずは、お約束の生ビールを一気に飲み干した。
お店のおかあさんの薦めに素直に従い、カツオのたたきの塩とタレを両方と、カツオの丼を頂いた。カツオのたたきを塩で食べるのは初めてだったけど、どちらかというとポン酢ダレにつけて食べるほうが好きなことに気づいた。カツオの丼が旨かった。カツオも海苔と混ざったごはんと一緒に食べるとまた違った味わいで楽しい。
高知名物のウツボもやっておこうと注文したが、残念ながらこの日はなかった。気を取り直して、鯨に変更。メニューを見ると「鯨さえずり」とある。さえずり…?お店のおかあさんに聞くと「舌よ!」と、旨そうな顔をして答えが返ってきたのでそれを頼んだのだが、目の前に出てきた姿を見てびっくり。牛タンよりもとうぜん大きいものをイメージしていたら、なんとも小さな切れ端のようなものが並んでいた。ペロリとやると、あまーい味わいが口の中にふわっと広がった。こりゃ珍味だ。
その後もたらふく食べ店の外へ出ると、雨もすっかり上がっていた。昼間とは違い、ヒンヤリ涼しい空気に包まれながら夜の街を家族でブラブラ歩いた。仕上げにホテルに戻り最上階の展望大浴場の湯につかった。運良くひとり…。窓の向こうには夜の高知の街並み。ガタンゴトンと、近くを走る路面電車の音が静かに聞こえてきた。
(06年9月:旅々旅人) |
|
|
|