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1:白骨温泉(媒香庵)
2:白骨温泉(泡の湯)
3:岩魚の唐揚げ
4:信州そば |
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>>詳細地図(Googleマップリンク) |
[アクセス] |
●調布IC→(中央高速:約3時間20分)→松本IC→(車:約10分)→松本城→(車:約1時間20分)→白骨温泉・泡の湯旅館→(車:約5分)→白骨温泉・媒香庵→(車:約15分)→乗鞍・御池→(車:約5分)→乗鞍・合掌 |
[関連サイト] |
■松本城(新まつもと物語)
■白骨温泉・泡の湯旅館
■白骨温泉・媒香庵
■乗鞍高原・御池
長野県松本市安雲3886-13
TEL:0263-93-3520
■乗鞍高原・そば処 合掌
長野県松本市安雲乗鞍温泉郷
TEL:0263-93-2612 |
[旅行手配内容] |
●自家用車:約15,000円(全費用:ガソリン代含む) |
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「甲斐」、「諏訪」。戦国時代を今も尚感じさせる地名が長野自動車道を走る車のナビに表示されている。武田信玄、上杉謙信、真田幸隆・幸村、木曽義仲、諏訪頼重などの名前が浮かびつつ、窓から見える風景を眺めるとなんとも感慨深い。
季節は4月の後半。1年近くかかった大仕事が終わり、気晴らしにどこかへ出かけたくなり信州(長野)へ行くことにした。一度、天守閣が現存する国宝の松本城を見ておきたかった。そして信州そばを食べ白骨温泉にひたすら身体をうずめたかった。
フロントガラスには雪をかぶった美しい北アルプス。道路沿いにはときどきソメイヨシノや枝垂れ桜が姿を見せる。東京の桜は既に葉桜になっていたので、桜の季節はもう終わったものと思っていたけどそうではなかった。当たり前か…。
渋滞を避けたく、朝の5時頃に東京の北区の自宅を出たこともありスイスイとおもしろいように車は流れ、わずか3時間30分程で松本城の駐車場に着いた。まだ朝の8時。松本城の堀端にもまた桜が咲き乱れていた。車を降りると春になりたてのようなヒンヤリした空気に包まれた。伸びをしながらぐるりと周囲を見渡すと、松本盆地の向こうにまだ雪の残る美しい山並みがあった。
松本城の開城は8時30分。それまで内堀の周りから眺めることにしたが、まあ見事な天守閣。感動。5層6階建てで3つの櫓が連なる黒を基調とした平城。そして天守閣の周り、内堀の周りにも桜が華やかに彩り、それはそれは美しかった。内堀の周囲をぐるりと一周しながら一つの疑問が沸いた。
「松本城って誰の城だっけ?」
あまり歴史上に登場する城ではないので思い出そうとしても答えに辿り着くことはないのであった。(笑)開城の時間になり600円のチケットと一緒に渡された小さなパンフレットにその答えが書かれていた。
松本城は戦国時代の1504年に造られた深志城(ふかしじょう)が始まりで、その後1582年に小笠原貞慶(さだよし)が深志城を回復し、名前も松本城に改めたとあった。歴代藩主は5家(石川氏、小笠原氏、戸田市、松平氏、水野氏)23代に渡り、甲斐の武田氏の所領となった時期もあったらしい。
天守閣に一番乗りし、城内を見て回ったがやはり本物の城はすごい。竪格子窓から差し込む自然光だけの明るさの中、当時の武将達と同じ空気や感覚を味わえた。月見櫓と呼ばれ、文字通り月見をする目的で造られたとされるめずらしい櫓もあった。三方の木戸がそれぞれ順に開けられ開放的。ここで夜な夜な酒を飲みながら月を眺めたのだろうか…。
松本城を後にして向かったのは乳白色の湯で知られる白骨温泉。標高約1400メートルの山峡にある温泉郷でお隣の岐阜県とも背中合わせ。ふと目に入った道路上の電光掲示板に、白骨・乗鞍方面は夜間通行禁止だとか交通規制の文字が並んでいる。後で知ったことだけど信州は標高の高い山道が多く通行できない期間や時間帯が結構あるらしい。この日何気なく通った「上高地乗鞍スーパー林道」も長期間に渡って通行禁止になる時期がある。
いやー何も知らないで来てしまったが、とりあえず通れてよかった。(笑)松本城を出て1時間20分程で白骨温泉に着いた。想像以上に小さな温泉郷。改めてガイドブックを見ると湯宿は11軒しかないらしい。
最初に入ったのは「泡の湯旅館」。日帰り入浴は800円。檜造りの古びたいい感じの内風呂があり白濁した湯と透明の湯に分かれていた。そこで一人のおとうさんが夢心地な感じだったので声もかけずに通り抜け大野天風呂へ出ると、今度はいきなり一人の女性と向かい合った…。
「あれーーー!ひょっとして間違えた!?」
周囲を見渡し始めて混浴であることが分かった。しかし内湯は別々。大野天風呂に限って入口は違うが合流する形となっていたのだ。あぁぁぁ良かった…。間違いでなかったことにひとまずホッとした。お湯はやわらかな乳白色で硫黄の香りが鼻を心地よく刺激する。湯温は少しぬるめだけど長湯するには調度いい。どぼどぼと落ちる湯滝にあたるとかなりぬるかった。
しかし、混浴というのはどうにも落ち着かない。先程内湯につかっていたおとうさんも移動してきたので内湯の白濁した方の湯につかった。加熱しているらしくやや熱めで気持ちのいい湯だった。湯をすくい顔をつけると目が痛くなった。この感じがとても好き。しかしなぜ透明の湯と白濁した湯があるのか。白骨温泉の湯は最初は透明だけど時間が経つにつれて白くなっていくと壁に書かれていた。
さてと、もう一軒寄ってみよう。寄ったのはネットで評判の良かった媒香庵。お蕎麦など郷土料理の食事処だけど温泉も入れるらしい。古めかしくも重厚な木造家屋。入り口に、今日は蕎麦はやっておらず日帰り入浴のみと書かれていた。風呂上りにここで信州そばを頂こうと思っていたので残念。聞くとまだこの時期は蕎麦がないらしい…。その事実に驚きガックリしつつ、温泉だけを頂くことに。料金は600円。
一つだけしかない露天風呂への無機質なドアを開けると、そこには奥深く山々が続く大自然が広がっていた。
「おぉぉぉぉ。これはすごい…」
そしてその風景を楽しむアリーナ席のように、乳白色の湯がたぷたぷ入った湯船が横たわっていた。しかも湯客は僕ひとり。さいこう…。なんという贅沢な。10人も入れば一杯になりそうな小さめの横長のその湯舟につかるとちょうどいい湯加減とまろやかな乳白色の湯が実にいい感じだった。泡の湯よりもさらに硫黄の香りが強く泉質自体もなんだかさらに濃厚な感じで、手ですくった湯に顔をつけると目が開けられないくらい痛くなった。
「これはいいや…」しばらく湯から上がりたくなくなり、随分と一人で長湯をした。お湯は飲めると書いてあったので源泉が流れ出てくる所に置かれた木の舛で飲んでみたがしょっぱく美味しいものではなかった。(笑)いつの間にか仕事の疲れもどこかへ消えていた。やはり温泉は露天風呂であり、景色がよく、硫黄泉質であり、ひとり湯であることが最高の条件。ここは、それを全て満たしてくれた。
媒香庵を出て、ガイドブックにあった他のそば屋へ寄ろうと、前を通りかかった地元の人らしきおかあさんに場所を聞くと、その店も今はシーズンオフらしく9月の新そばの時期まで営業すらしていないらしい…。
「他に蕎麦が食べられる店はないですか」と聞くと、
「あそこにある球道さんで食べられるわよ。おいしいわよ」と言われ、振り返ると二階建ての大きな建物の二階がどうやら食事処らしかった。
見晴らしのいいテラス席に座り、きのこ蕎麦を頼んだ。ビールをやれないのが残念だが、風呂上りの山の風が気持ちよかった。五分ぐらいすると注文を聞いてくれた女性がまた現れてこう言うのでした。
「あのーすいません…。蕎麦を探したのですが見つからなくて…」
「えっ……………………」
「蕎麦がないんですかぁ…。じゃあどこへ行けば食べられますか」と聞くと、
「この下の乗鞍(のりくら)なら何軒か蕎麦屋がありますけど…」と申し訳なさそうに返ってきた。
なんということか。もう笑うしかなかった。交通規制がしかれるこの時期は蕎麦が入ってこないのだろうか…。仕方なく車を乗鞍高原へと走らせた。わずか10キロ弱。信州の「食」は、完全に行き当たりバッタリになった。大丈夫か…。(笑)しかしながら車から見渡せる乗鞍の風景が美しい。新緑はまだ先。
何軒か蕎麦屋があったが中でも印象に残った「御池」という蕎麦屋に入った。落ち着いた快適な店内のテーブル席に座りおすすめを聞くと、岩魚の唐揚げと惣菜3品と盛り蕎麦のセットメニュー(1,500円)がおすすめと言うので素直に従った。
「蕎麦は後からお持ちします」と言いながら、まずは岩魚の唐揚げと惣菜が乗った皿が置かれた。惣菜はほうれん草と揚げだし豆腐とかぼちゃ。まずは惣菜が鮮度がよく素朴な味わいで実に美味しかった。お通しのように出てきた野沢菜も抜群。地産の岩魚の唐揚げはとてもやわらかくサクサク。あっさりした風味で頭から尻尾まで何一つ残さずきれいに食べ尽くした。
続いて出てきた盛り蕎麦。麺は手打ちで平たくやや太目。コシがありツルツルヒヤヒヤ。喉越しもよくふわりと甘味を感じ、うまい。器も陶器でずしりと重たくこれまた程よく冷やされている。さすがに蕎麦の本場。この店は蕎麦打ちの教室もやっているらしく店の隣の部屋がそういう場所になっていた。
せっかく信州に来たのでもう一軒、盛り蕎麦を一皿だけツルリと行くことにした。入ったのは同じ乗鞍にある合掌造りの古民家で宿泊施設も兼ねたそば処「合掌」。合掌造りに強く惹かれた。畳の部屋のテーブル席に胡坐をかき、盛りそばを一皿(600円)頼んだ。先客が二組。地元の人らしいおじいちゃん二人と、随分と訛りのあったカップルがいたがまだ頼んだものは来てないらしかった。
おじいちゃん達は蕎麦の前に瓶ビールを楽しんでいる。うらやましい…。そして僕のよりも当然先にそのおじいちゃん達の盛り蕎麦が運ばれてきた。そして食べるやいなや、「うまい!!!」と、咄嗟にどちらかが叫んだ。「うん、うまい」と相槌を打つようにもう一人がつぶやく。70歳前後のおじいちゃんが咄嗟に大きな声で「うまい!!!」と叫んでしまう蕎麦とはどんな蕎麦なのか…。信じられない光景だった。
その同じ盛り蕎麦が僕の前にも現れた。蕎麦の上に海苔が載せられたいたって普通の感じ。ちゃんと味が分かるように、そば醤油もつけず、まずはそのまま食べる。うまい!!!ほんとにうまい。細くてつるつるでシコシコした麺はほど良く冷やされておりみずみずしい。蕎麦本来の香りと味わいも実に豊か。そのままでも十分に美味しい。こんなに素直に美味しいと思った蕎麦は初めて。
行き当たりバッタリで何の評判も聞かず、何も調べもしないで入った店がこんなに美味しいとは。こういう巡り会いは滅多にあることではない。感動。
さてとこの後どうするか。予定ではこのまま富山の五箇山へ行くつもりだったけど、泊る予定にしていた宿がさすがに当日申し込みでは取れず宿泊そのものをあきらめることにした。渋滞を避けるため少し早めに東京へ向けアクセルを踏む。白骨温泉の硫黄がたっぷり身体に染み込んだまま。
(08年4月:旅々旅人) |
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