一度でいいから、どうしても真冬の北海道へ行ってみたかった。
真っ白な雪に覆われひどく寒い北海道へ…。
「あのさぁ…、1月に札幌行かない?」
断れるのを覚悟の上で妻に聞いてみると、
「札幌?いいわねー」と意外にもOK。
「え!?いいの?」
「うん。行きたい。だって北海道でしょ」
「そうだけど、真冬だよ」
「いいよ…」
10分後にはANAの超割でチケットをゲットしていた。
1月の後半。羽田に着いた頃の東京の気温は13度。向かう先の札幌の気温は-9度。見たことも無い極めて非常識な数字が表示されていた。マ、マイナス9度…。ひぇぇーーーーー!妻に頼んで、ホッカイロを背中の首の下辺りにペタリと貼り付けてもらった。ここに貼るのが一番あったかいからだ。
午前10時発の札幌行きの飛行機は満席。みんな寒さに強いんだねー。離陸後、しばらくして飛行機の小さな窓から下を覗くと、雪に覆われた銀世界が広がっていた。うわぁぁぁ…。しばらく続く日本の冬の壮大な風景に目が釘付けとなった。
新千歳空港に着くと気温は1度上がっておりマイナス8度。空港から札幌まで直通で行けるエアポート117号に乗り込む。動き出したエアポートの窓を真っ白な雪景色がビュンビュン通り過ぎていく。これまたうつくしい…。積雪は、30センチほどかな。北海道は夏に訪れる人の方が圧倒的に多いだろうが冬に訪れるのも本来の北海道を感じれていい。
外はマイナス8度らしいが電車の中は暖房フェアーでもやってるのかと思うくらいムシムシと暑い…。ダウンジャケットはもちろん。厚手のシャツも脱ぎ、Tシャツの上にタートルネックという格好。それでもジトーと汗がにじみ出てくる。外へ飛び出し雪の上にダイブしたいと真面目に思ったくらい暑かった。新千歳空港を出て約35分。札幌駅のホームに降り立つと、清々しい空気に包まれた。ふー気持ちいい。まさか冬の札幌をこんなに清々しい気持ちで迎えられるとは思わなかった。わずか15秒ほどだが…。
札幌駅を出て全身で札幌の空気を味わう。雪は降っていないが積雪は約30センチ。ゴロゴロと旅行バックをひきずりながら向かったのは、月見軒という老舗のラーメン屋。わずか8分程の道のりだが、札幌の冬の厳しさを身に染みて感じた。さ…さむひぃ…。車道の脇に集められた雪は1メートル以上の場所もあった。月見軒に入ると外との温度差で一瞬にして眼鏡がくもった。あぁぁ、あたたかい…。この暖かさは助かる。そして一番人気と店の方が教えてくれたみそらーめん(700円)を注文。妻は塩らーめん(650円)。餃子好きの息子用に餃子も頼んだ。
みそらーめんは絶妙な辛さでほどよくニンニクの風味を感じる。中太の中華麺が懐かしく、昔ながらの本格的なみそらーめんといった感じでなかなかうまい。妻が子供も食べられるようにしおラーメンを食べていたので少しもらったが、断然みその方がうまかった。
汗が出るほどあったまり、歩いて8分程のところにある旅館へ早目のチェックインをした。子供がいると和室のある旅館が何かといい。しかし、通された部屋はタバコの臭いが激しく染み付いており僕も妻もかなりまいってしまった…。たすけて…。(笑)
既に昼の2時近く。家族全員ニットの帽子を深くかぶり札幌観光へ歩いて出かけた。最初に訪れたのは旅館からわずか3分の場所にある北海道庁旧本庁舎。1900年に造られた赤レンガの建物。庁舎のまわりは真っ白な雪に全面的に覆われ、まるで北欧のフィンランドの世界に紛れ込んだような気分だった。行ったことないけど…。とにかく美しい。中は、開拓時代の資料などの展示室や記念室になっていると聞いていたが、子連れだし時間もないためあきらめた。
次に向かったのはあの札幌時計台。途中、道端でティッシュを配っていたおねえさんに、念のため時計台の場所を確認したら、明らかに「プッ」って、笑われてしまった…。地元の人にとってはそういう場所なのだろうか…。
しかし、実際はどうだろう。建物自体はそれなりに見ごたえがあった。雪が積もり屋根からは大きなツララもぶらさがり映画や絵本に出てきそうな深々とした雰囲気がある。真下から見上げているとちょうど3時を知らせる鐘の音が鳴り響いた。時計台は、1878年に造られたかつての札幌農学校の演武場。
時計台の鐘がまだ響く中、ザクザクと雪道を歩くのだが、かれこれ1時間近く外にいたことになり、身体中が凍りそう…。おまけに雪もふってきた。あまりもの寒さになぜか妻と一緒にクククと笑った。人間極限状態になると笑いが起きるようだ。笑いながらしかし逃げ込むようにタリーズ(カフェ)に入った。あたたかいモカを飲みながらジワジワと身体が温まっていくのを感じた。ふぅー。生き返る…。
フカフカのソファーにゆたーと座り街を歩く人を眺めるが意外と軽装なのに驚いた。特に女性。丸の内のOLとほとんど変わらない。元々寒さに強い人達なのだ。原住民のアイヌの方や寒さに強い人たちが開拓したのだ。寒さに弱い人は北海道から出て行くのだろう。
もう少し色々回りたかったが予想以上に寒いので最後に大通公園にあるテレビ塔へ向かった。大通公園では2月から始まる雪まつりに向けて大掛かりな作業が行われていた。自衛隊担当の所はまるで大きな宮殿でも造るかのように何段にも足場が組まれ笑いもなく真剣な表情で雪の塊と向き合っていた。その作業ぶりは、明らかにプロフェッショナル。それにしてもなぜ自衛隊が…。
妙な疑問が残る中、地上90.38メートルのテレビ塔の展望台へ上がった。人口約185万人が住む雪景色の大都市が360度見渡せた。大通公園の先にあるのは、札幌冬季オリンピックの舞台になった大倉山ジャンプ競技場。ものすごい角度のジャンプコースが白くシューと伸びているのが見えた。あすこからジャンプするのかい?ひぇぇー。
夕方早めに旅館に戻った。さむい、さむい、さむい…。何とかしようとまだ誰もいない大浴場のあたたかい湯に身体を沈めた。ふぅ……。たまりません…。風呂上りに自動販売機でサッポロクラシックを買い部屋でグビリ。1時間ほど部屋でくつろぎカニを食べにまた街へ出かけた。札幌の駅前から続く道がイルミネーションでキラキラ輝いている。
入ったのは「かに本家」。入口を入った所に大きな生簀がありどでかいタラバガニがガサゴソ動いていた。さすがヤドカリ科。横はもちろん、前後にも動いておりまるでカニらしくなかった。小部屋に通されカニすき会席(雪の舞:6,300円)と子供用に、カニの太巻き寿司(1,200円)を頼んだ。
ビールをやりながら次々と運ばれてくるカニ料理をつまんでいく。タラバ、毛ガニ、ズワイガニの味くらべカニ酢、ズワイガニの刺し身、カニ豆腐、カニ味噌、カニもずく、カニの甲羅揚げ、ズワイガニすき、ぞうすい、フルーツと続いたが、中でもカニ味噌と甲羅揚げ、あとカニの太巻き寿司がうまかった。 家族三人でこれでもかという量と種類のカニ料理と向き会いなかなか楽しくお腹もいっぱいになった。
外は相変わらず雪の街が広がっており当然のように寒かった。道路が凍っているらしく何台もの車がツルンツルン豪快にスリップしてたが、運転手は特に慌てる様子もなくすましていた。(笑)旅館へ帰り子供を風呂に入れた後、また一人で大浴場の湯につかった。真冬の札幌で入る風呂は格別で、しみじみと幸せに感じた。早めに布団へ入ったが、部屋中に染み付いたタバコの匂いで眠れなかった…。(笑)
***
朝5時。まだ寝ている家族を残し、タクシーで約10分程の中央卸売市場の場外へ一人出かけた。市場で朝ごはんを食べるためだ。まだ真っ暗な中、平野屋という寿司屋に入り、サーモンのづけ丼(680円)とセットのカニ汁を味わった。カニの味噌がたっぷり染み込んだカニ汁がなんとも旨かった。ついでにタラバガニのにぎりも(二つで400円)締めて1080円。なかなかの朝ごはんでありました。
(07年1月:旅々旅人) |
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